成年後見はもっと利用されるべき制度
成年後見制度の中でももっとも多く利用されているのが、補佐(人)や補助(人)ではなく、後見(人)です。後見では、重度の認知症や統合失調症などの精神の障害により、判断能力がほとんど失われている事が多く、ご本人の支援のためにご家族は大きな負担を強いられることでしょう。会社に勤めている方が、後見の役割を担うとなると、その負担は想像を絶することでしょう。また、老々介護という問題が社会現象となりつつあります。こういった現状でも、成年後見制度の利用件数は欧米諸国と比較して、日本でははるかに低いのです。その主な理由として制度の理解が進んでいない事と、後見制度利用の入り口である家庭裁判所への申立手続きの複雑さがネックになっているのではないでしょうか。また成年後見制度の利用をお考えになった時、一体誰に、また何処に相談すれば分からない方も多いでしょう。成年後見申立ての流れについて順を追って説明していきます。
どこに申し立てをすればよいのか?
成年後見制度を利用するためには、ご本人の住民票の所在地にある家庭裁判所に、成年後見開始の申立を行う必要があります。
誰が申立てをできるのか?
- ご本人
- 配偶者、四親等内の親族(配偶者、両親、兄弟姉妹、甥、姪、従妹など)
- 市町村長、検察官(ご本人に申し立てをしてくれる親族がいない時)
これらの人が申立人になることが可能です。任意後見ではご本人が申立人となる場合もありますが、法定後見では、ご本人の体の状態もあり、ほとんどの場合ご本人の親族が申立人となっております。市町村長や検察官の申立はご本人に全く身寄りがないか、親族が関りを断っているようなケースです。
成年後見人等の候補者とは?
家庭裁判所が選任する成年後見人等を、申立人の側で予め決めておく候補者の事です。誰が成年後見人等に選任されるのか、ご本人やご家族にとっては非常に関心があり肝心なところかと思います。この候補者は破産手続きを行った人や未成年者でなければ、法律上特に制限はありません。ご家族は勿論、親戚や信頼できる友人、第三者等を候補者として申立てを行うこともできます。しかしご注意いただきたいのが、成年後見人等を誰にするかを決定するのは裁判所であり、必ずしも申立て時に推薦した候補者が選任されるとは限らないということです。裁判所はご本人にとって最良と思われる人物を成年後見人等として選任します。そのため例え家族でもご本人と仲が悪かった人や、多額の借金がある人はまず選任されないと言っていいでしょう。また、ご本人の保有財産が高額だった場合、司法書士や弁護士などの専門家が選任されることが多く、仮に希望通りの候補者が選任されたとしても、成年後見監督人(後見人が不正を行っていないか監督する人)が同時に選任されるケースになることが多く見られます。なお成年後見人等の候補者は、必ずしも決めておく必要はありません。候補者がいなければ候補者なしで申立てをすることができます。その場合は裁判所が後見人候補者を探し選任します。
成年後見制度の申立てに必要な書類
- 本人の住民票
- 後見人等の候補者の住民票
- 本人の戸籍謄本
- 本人の家族・兄弟姉妹などの戸籍謄本
- 本人の財産がわかる資料
不動産の登記記録、預金通帳のコピー、証券会社から送付された株式の銘柄などのコピーです。 - 同意書
本人の後見申立に親族が反対しない事を証明するためです。この親族の同意書が無くても手続きを行う事は可能です。 - 医師の診断書・診断書附票
診断書の書式は家庭裁判所の書式で医師に記載してもらう必要があります。しかも管轄の家庭裁判所の書式である必要があります。例えば東京都に本人の住民票があれば東京家庭裁判所の書式で、神奈川県に住民票があれば横浜家庭裁判所の書式の診断書で医師に記入してもらってください。各家庭裁判所のホームページからプリントアウトできます。なおこの診断書、診断書附票には3カ月以内という有効期限がありますのでご注意ください。 - 本人が登記されていないことの証明書
専門家の間では通称「ないこと証明」と呼ばれております。本人の住民票の所在地の法務局の本局(各都道府県で一番大きな法務局というイメージで結構です)で取得できます。郵送で取得する場合は東京法務局でしか行っておりません。こちらも後見申立時で発行から3カ月以内という制限があります。
管轄する家庭裁判所により必要な書類、添付資料に若干の違いはありますが、上記に挙げた書類が申立てに必要な書類となってきます。